「十六夜咲夜月人説」についての個人的見解
非常に今更ではあるが良い機会なので、十六夜咲夜月人説についての個人的まとめをメモ程度に残しておく。
まずこの説が提唱されるに至る根拠を提示し、その見解を述べる。
i.「十六夜咲夜」という名前。
十六夜の昨夜だから十五夜、すなわち満月を意味するというのは有名な話。
これ以上ない程月人と因縁のある名前である。
しかしこの名前を付けたのは月人には無関係の吸血鬼であるから、この名前が月と関係する可能性は低いと言われてきた。
一見するとその様に考えられるが、命名者は"運命を見通す"しかも"壊滅的なネーミングセンス"とネタにされるレミリア・スカーレットである。
そう考えると十六夜咲夜の名前は月人説を裏付ける根拠になりはしても否定する根拠にはならないだろう。
また十六夜咲夜の名前は富士山の主神である木花之咲耶姫とも関係があると言われる。
この神は藤原妹紅や岩笠らの蓬莱の薬を葬る、という願いを拒んだ神であり、月人と因縁がある。
また木花之咲耶姫は瓊瓊杵尊との一夜だけの交わりで懐妊した事や、燃える産屋の中での出産を成功させた等、時間加速に近い能力があったのではないかと解釈される。
出会った際にその運命を見てとったレミリアが「十六夜咲夜」という皮肉めいた名前を付けたのではないだろうか。
レミリアも満月に関連するネタがある事から、「十六夜咲夜」の名前は一見すると月人とは結びつけられない、神主のミスリードである可能性が高い。
ii.「時を操る程度の能力」
十六夜咲夜の「時を操る程度の能力」であるが、どう考えても一介の人間が持つには余りに異常な能力である。
公式/二次含めて「時を止める」という描写が多い分余り意識されないが、あくまで「時を止める程度の能力」ではなく「時を操る程度の能力」である事に注意したい。
アインシュタインの時間と空間は同じものであるとする「時空連続体理論」に基づくと空間さえ支配し得る事は周知の事実。
また漢代の淮南子に語源を有する「宇宙」は「宇=すべての空間(天地四方)」「宙=すべての時間(古往今来)」とされ、月との関係が伺える。
この能力により時符「トンネルエフェクト」では、恐らく波動関数を揺らす事で別の場所にいる自分の存在確立を上げ、物理的に移動不可能な場所へ瞬間移動する、という量子力学の分野すら手中に収めている。
「時を操る程度の能力」は蓬莱山輝夜の「永遠と須臾を操る程度の能力」に通じる、というのは良く言われる事であるが(ニコニコ大百科では何故か咲夜の能力は輝夜の劣化であると書かれてる)、明らかに蓬莱山輝夜の能力の完全上位互換であると言える。
個人的に東方projectのキャラクター達が持つ能力の中で、取り分け破格なものは「境界を操る程度の能力」「運命を操る程度の能力」そして「時を操る程度の能力」だと思っている。
ただの種族:人間がこれ程の能力を持っているのは明らかに異常である。
iii.スペル発動時に眼が赤くなる
細かいところであるが、これも咲夜月人説を裏付ける一因だろう。
東方projectに於いては、ある程度"人間は人間らしく"描かれている物である(空は飛ぶが)。
しかし十六夜咲夜はその枠に当てはまっていない。
眼が赤くなる、というのは当然鈴仙に通じるところがある。
また永夜抄の6面に於いて「咲夜が満月の狂気に当てられるのではないかとレミリアが危惧するが、咲夜には何の影響も無い」という描写があるのも抑えておきたい(しかしこの時狂気に当てられた描写があるのは魂魄妖夢だけであり、何故か博麗霊夢も霧雨魔理沙も影響が無い)。
iv.八意永琳との関係
十六夜咲夜月人説の一番の理由となる物はこれであろう。
永夜抄のキャラ設定.txtの八意永琳の項の最後に「また、咲夜を見て大変驚くのだが、何故なのかは永琳にしか判らない。」とあるのが発端である。
一般的には永琳の元ネタの八意思兼神と木花之咲耶姫が近しい関係であり、また上記i,の蓬莱の薬関係の因縁がある事から、「さくや」が同じである事に驚いたのだ、と解釈される事が多い。
しかし、八意思兼神の妹神である栲幡千千姫命の息子である瓊瓊杵尊の婚姻相手が木花之咲耶姫であり(思兼の甥の嫁)、そこまで深い関係でもない。
良くこの手の考察を読むと思兼神と木花之咲耶姫は血縁関係である、等と書いてある事が多いが、それは大間違いである。思兼神は天津神で木花之咲耶姫は国津神だ。
木花之咲耶姫=十六夜咲夜とそのまんま解釈するのは流石に無理があるし、そもそも「さくや」の名前が同じだけで永琳がそこまで驚くのか?という事を考えると、驚いた理由は別にあると考えるのが妥当だろう。
十六夜咲夜月人説の大きな根拠となる。
この話についてZUNは「2人の関係を語るとゲーム一本分出来てしまうので割愛する」とも「かけことばのような物でしかない」とも発言しており、その真意は測れない。
根拠としては以上だろうか。
次に咲夜が月人であったとして、何故紅魔館でメイド(しかも10代)をしているのかであるが、それは竹取物語原典を考えれば良い。
蓬莱山輝夜は月上での退屈な日々から逃れる為に蓬莱の薬を作り、又その罰が地上への流刑である事を知り、暇つぶし目的で蓬莱の薬を飲む。
その結果地上へと流され「かぐや姫」として転生し、竹取の翁に拾われ人間として生活する。
重要なのは、月の使者が迎えに来るまでは極普通に人間として成長していた事にあるのではないだろうか。
人間として成長しているかぐや姫の間に、蓬莱山輝夜としての記憶があったかどうかは不明だが、竹取物語原典の内容から判断するならば、月の使者が迎えに来るというお告げがあるまでは"流刑されている"という記憶は無かった、と考える方が妥当だろう。
そして月の使者から迎えに来るというお告げにより記憶が戻る時期であるが、天皇に婚姻を申し込まている(実際は私達が考える"結婚"とは程遠いが)事を考えると、恐らく18才-22,3才だろう。
この事実から考えると、十六夜咲夜はかつての「かぐや姫」と同様に何らかの理由によって月人から人間として転生した存在であり、そこを竹取の翁がかぐや姫を拾って育てたのと同じ様に、レミリア・スカーレットが拾い、その運命を見通した上で「十六夜咲夜」という名前をつけ、メイドとして雇ったのではないだろうか。
そう考えると、そろそろ咲夜の元に月の使者が迎えに来てもおかしくは無いだろう…。
以上が自分の「十六夜咲夜月人説」に対する見解である。
この論ではあくまでも「大きな矢印」を設定したに過ぎないため、細かい問題があるのは当然と思うが、他の説に比べたら明らかな矛盾は少ないと考える。
最後に十六夜咲夜が月人であるとしてのメリットであるが、それは一重に"寿命"の解決だろう。
なんだかんだ寿命ネタは悲しいモノ、というのは東方好きの共通認識ではないだろうか?