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明治維新後の初期近代日本に於いて、まず何としてでも行われなければならなかったのは、欧米列強による植民地化からの防衛であった。▼江戸期の海禁政策が功を奏し、国内のキリスト教人口が少なかったお蔭で列強による文化的侵略は免れたと言われているが、まず第一に主権国家としての確立が急がれた。そこで大衆に国民意識、つまりナショナリズムを形成させる為に最も手っ取り早かったのが、「天皇の象徴化」である。この意味での象徴化とは第二次世界大戦後のそれとは異なり、大日本帝国の頂点としての天皇の存在を国民に知らしめる、という意味である。江戸時代以前での天皇という存在は、国民にとって「京の都に天子様というそれはそれは偉い御方がいらっしゃるそうじゃ」という様なお伽話世界、全く現実味の無い存在だったのだ。▼天皇の存在を大衆に知らしめ、「天皇に統治されている国民」という意識を根付かせる為に行われたのが、事あるごとに「天皇陛下万歳大日本帝国万歳!」とやるアレである。つまり、日本国で形成されたナショナリズムというものは、欧米でしっかり養成されたそれとは違い、ある種「洗脳的」なものなのだと推測できる。