『ツァラトゥストラはこう言った』 著:Friedrich Nietzsche 訳:氷上英廣

ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)

ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)

ツァラトゥストラはこう言った 下 (岩波文庫 青639-3)

ツァラトゥストラはこう言った 下 (岩波文庫 青639-3)

先月から勉強の合間を縫って読み続けていた『ツァラトゥストラはこう言った』を漸く読了した。
自分は哲学には大して興味も無いので、この作品がどういった流れの上で生まれたのか、又世界にどのような影響を与えたのかは全く知らないが、この作品の持つ"迫力"だけは十二分に受け取ったと思いたい。
その内容も然ることながら、やはり読んでいて響くモノがあるのは、その独特な文体だろう。聖書のパロディが多く用いられているというが、訳者の質の高さが伺える。
その特徴的な文体は、普段は全くこういった哲学書を読まないという人にも十分なインパクトを与えるものである。難解な哲学書なんて読みたくない!という人こそ、一度手にとるべき作品であるのかもしれない。

作中にこれは…と思うような名言が幾つも登場した。
その中でも最も重要とも言える一節、『深夜の鐘の歌』を書き残しておく。

おお、人間よ!しかと聞け!
深い真夜中は何を語るか?
わたしは眠りに眠り――、
深い夢から、いま目が覚めた、――
この世は深い、
『昼』が考えたよりもさらに深い。
この世の嘆きは深い――
しかしよろこびは――断腸の哀しみよりも深い
嘆きの声は言う、『終わってくれ!』と。
しかし、全てのよろこびは永遠を欲してやまぬ――、
深い、深い永遠を欲してやまぬ!