贈り花

今日、お祝いの席やお見舞いの品、単なるプレゼントとしてでも「花を贈る」という事はかなり定着しているのは疑いようもない。しかし、この「花を贈る」という文化は古来から日本にあったものなのだろうか、それとも近代になって欧州から伝わったものなのだろうか。▼ヨーロッパに於ける「花を贈る」という行為は恋人同士のモノ、という側面が強いらしく、その文化は古くまで遡れるらしい。成程、ロミオとジュリエットの様な世界を思い浮かべれば、分からなくもない。対して日本での花を贈るという行為は、平安時代天皇儀礼の際に公卿に花を下賜する、という所にまで遡れるようだ。その結果として「花」は畏れ多いモノという事になり、欧州の様な恋愛に際して花を贈る、というような文化は根付かなかったらしい。確かに「優曇華」等、古典を読んでいても花は神聖なものというイメージがなくもない。華"道"というのも、その一種だろう。▼しかし、源氏物語では例外的に告白の際に花を贈る描写があるらしい。だが源氏物語が中世の世界で普及していたにも関わらず、花贈りの文化は生まれなかった。その背景には儚い女性の願望と、現実的、あるいは女性差別的な中世男性との隔たりがあるのかもしれない。