近代グローバル化の始まり

世界史のレジュメで担当した範囲を簡易的にまとめておく。

I.近代世界システムの形成
大きな背景としては大航海時代の存在。
その発生する要因としてはレコンキスタに伴う強力な中央集権的、また軍事的な国家の形成。ルネサンスによる、遠洋進出を可能にする航海技術、到達地の征服を可能にする火薬技術、それらを流布させる印刷技術の発展。また自然科学発達により、トスカネリの地球球体説の強い影響。さらに、ヨーロッパ内の人口増加により東方物産への需要増加。

結果、東南アジアとのイスラーム世界を経由しない交易が可能になる。新大陸アメリカが発見される。それにより、世界商品たる銀・砂糖を通じての世界システムが発生する。またアメリカ大陸からの大量の貴金属流入により価格革命と商業革命が起きる。

近代世界システムとは端的に言えば"資本主義的枠組み"であり、単一の世界市場に依存する反面、一部の地域がその覇権を握る事で、「中心」と「周縁」の格差が生まれる。中心が付加価値の高い工業製品を生産するのに対し、周縁は原料・食料の生産に特化する。結果中心による周縁への資本搾取が起きる。史上の例としては三角貿易・グーツヘルシャフト等。

II.主権国家体制の形成
大規模な航路開拓、植民地の征服、資本の防衛と拡大のために強力な軍事的・中央集権的国家が必要となる。
13-14世紀のヨーロッパは封建領主制であり、君主の権力は低い。
15-16世紀間に中央集権化が進む。cf:英の首長法、仏のブルボン朝成立。
17世紀に宗教問題から三十年戦争発生。最初の国際戦争へと発展。結果、常備軍とその維持のための官僚制機構が必要となる。国家権力が領土内の支配権を独占。近代国家が誕生する。
Max Weber『国家とは、正当な(ものとされる)物理的暴力行使の独占を権利として要求している団体』

君主と地域社団・議会の対立が起こる。
君主が議会に勝利した例=フランス。ルイ14世によるフロンドの乱鎮圧。中央集権化が進み絶対王政絶世期へ。
君主が議会に敗北した例=イギリス。フランスと違いピューリタン革命・スコットランドの反乱に対応しきれず、議会側が勝利。立憲君主制成立。
しかしどちらも近代国家=主権国家である事に違いはない。

主権国家とは、自国領土に排他的な支配権=主権を持つ。主権の及ぶ領土を持つ。領土に居住する国民を持つ。結果、国民国家論、ナショナリズムへの大きな影響を与える。
主権国家はそれぞれが対等な存在であり。互いに競合する。ウエストファリア条約は互いに主権を承認し合った最初の国際条約。

近代グローバル化の始まりとは。上記の経済的な近代世界システム化、主権国家体制化に端を発すると解釈できる。またこの"近代グローバル化"は徐々に他地域を飲み込んでいく。
cf:アメリカ独立1783年、日本明治維新1868年、インド直接行動の日1946年。

今後の考察としては宗教改革主権国家体制確立への影響か。ユグノー戦争、ピューリタン革命、三十年戦争等、多大な影響を与えている。またカルヴィニズムの資本主義形成への貢献(Max Weberプロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』)。近代世界で覇権を確立した蘭・英・仏はそれぞれカルヴィニズム・国協会・カトリックと宗教が異なるのも面白い。


『歴史から今を知る―大学生のための世界史講義』上杉忍, 山根徹也より、第二章の高校生的解釈でした。