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『人が生活し、感じ取り、経験し、人生の意味を見出していない限り、その人間に聞く価値のある話は何もない』

上の文章は何か著名人の記した様な物でもなんでもない。普通の英語参考書に載っている至極平易な文章である。
参考書の例文として使用されるような文章でありながら、この文章の意味を真に理解して生活している現代人がどれ程いるだろうか。

かつては学者や文学家等の所謂"知識人"が世間の尊敬を集め、注目され、また多くの若者の目指すところであったはずである。
しかし最近では社会的、特に経済的に成功している人間が尊敬の対象へと成り代わっている。
知識人の皮を被った只の金持ちが跋扈する世の中へと変貌したのだ。

いつの間にか文学作品や哲学書、専門書の名著は煙たがられるようになり、"有用な読書"という名目で経済学書、特に「金持ちになる方法」ばかりが読まれるようになった。そして又、それが若者の正しい姿であるという理念すら世間に浸透している。


もう一度書きたい。

『人が生活し、感じ取り、経験し、人生の意味を見出していない限り、その人間に聞く価値のある話は何もない』

参考書の例文に載る、至極平易な文章である。