佐藤惣之助 - 「水兵」

佐藤惣之助という明治〜大正の詩人についてです。

三好達治著の「詩を読む人の為に」という本で、口語自由詩を書く詩人の一人として紹介されていました。

まあ自分で読もうと思った訳ではなく、学校のテキストでたまたまレジュメの発表範囲だっただけなのですがw


死後50年以上経過している作品なので、折角ですし本文を載せてみます。

「水兵」

横須賀は甲鉄の港だ。

海底のやうに夜があけて

往来がきれいな波間に見え

早起きの水兵が錨やうに両手をふり

花麗な日の出に埋もれながら歩いてくる



海軍はあざやかだ。

ペンギン酉が金モールをつける

勢ひが満悦してくる

世界の海原を歩いてくる

若い水兵は二三人ずつ

少しとしをとったのは自由に一人で

市街を清め、天気を醒ましにどしどしやつてくる

大洋の情熱があらはれる

笑ひながら爽やかな眼つきで

艦隊をそろへ、意匠を調練し

扇風機の真鍮色をして

新しい鴎の散歩をはじめる。



まるで母に引廻される愛らしい猛獣のやうに、

きれいな無理の法則にしたがって

一定の旋律に支配され

時間で出て来て、又時間で引上げる

別に用のない者もありようのあるのもある

歩きたくない者も何も見たくない物も

みんな本能で町の光にうかみ出して来て

東西を歩き廻り、ぐるぐる心をほどいて

又真青な海の兵舎へ

夜といつしょに引きあげていく

永く大洋にいたものは

どんなに陸といふ青い大きな地の船へ

とびのつてかけづり廻って見たいか

陰気な陸兵はあるが

ぼんやりもそもそした海兵はない



長くなるのでこの辺までで…

現代にも十二分に通じる鮮やかな色彩と強烈なまでの比喩が大変魅力的ですね。

第一次世界大戦中の活気あふれる様子が伝わってきます。


まあレジュメ書くのは結構辛かったですが…。

詩というのも知っておきたいジャンルの一つですねぇ。